イタリアでも東奔西走の記
2012.8.31 その2 ミラノ

ミラノの南西部に位置するポルタ・ジェノヴァ駅より、2番のトラムに揺られて、街の中心、ドゥオモ(大聖堂)を目指します。なんて書くとけっこうな距離のように感じますが、ミラノはさほど大きくない街なので、実際には2〜3キロ、歩いても行けるくらいの距離です。

トラムを降りて角を曲がると、ぱっと視界がひらけました。

わああああ、わああああ!!!
 

言葉にならない感動が、広場の鳩を数羽飛び立たせるほどの叫び声となりました。いったいなにが私の琴線に触れたのかはわかりませんが、少し呼吸が乱れるほど、それは深く大きな感動でした。

そんな私の頭を冷やそうとするかのように、また空から雨粒が落ちてきました。ドゥオモの屋上に登るのを楽しみに来たのですが、まずは左手に見える「ヴィットリオ・エマヌエーレ2世のガッレリア」から見学することにしました。

こちらは1878年に完成した十字型のショッピングアーケードです。商店街再建の成功例として有名な高知県高松市丸亀町商店街は、このガッレリアをモデルにつくられました。

十字の交差する部分は、ガラスのドームになっています。

マクドナルドも、なんだかオシャレ。

中央近くの床にある雄牛のモザイクにかかとをつけて3回転すると願いごとが叶う、と聞いてはやらずにはいられません。ちょっと失敬して、雄牛の大事な部分にかかとを置かせてもらい、くるくるまわりました。かわいそうに、観光客が次々とやってきては同じことをするので、雄牛の大事な部分は少し摩耗していました。

そうこうしているうちに、空が明るくなってきました。ドゥオモの屋上に登るなら今がチャンスです。登り口は裏手にあるので、ドゥオモのなかを通っていきましょう。

ミラノのドゥオモはイタリア最大のゴシック建築で、建設が始まったのは1386年。それから400年以上の歳月を費やして、1813年にようやく完成したといいます。日本でいえば、南北朝時代から江戸時代にかけて。気の遠くなるような話です。

屋上に登るには、ふたつの方法があります。

1.エレベーターを使う=10ユーロ
2.自力で階段を登る=6ユーロ

楽しようとすれば、余計にお金がかかるのが世の常です。もちろん私たちは2を選択。息を切らしてえっちらおっちら狭い階段を登りました。

たどり着いた屋上は、まさに屋根の上といった感じ。空を覆い尽くしていたあの分厚い空は、いったいどこへ消えたのでしょう?

ガッレリアのドームが見えます。

広場の脇を走り抜けてゆくのは、私たちが乗ってきた2番のトラムでしょうか。

 

最も高いところに鎮座する金のマリア像は、修復中でよく見られませんでしたが、お天気が回復しただけで大満足。こうして高いところから見てみると、ミラノの街はどこまでも石造りの家がつづいているわけではなくて、近代的なビルが立ち並ぶエリアもありました。

また狭い階段をえっちらおっちら下りていったら、おなかがすきました。大竹昭子さんの著書『須賀敦子のミラノ』に、ドゥオモの裏手にコルシア書店のひとたちがよく食事に行ったレストランがあると書いてあったので、住所を頼りに探してみることにしました。

多くの国と同じように、イタリアも通りの名前が住所になっています。とはいえ、ガイドブックの地図にすべての通り名が記載されているわけではありません。裏手って言ったらこっちじゃない?とあてずっぽうに歩いていくと、はたして目指す通りの名前がありました。

つづいて番地。ミラノ特有の方式なのかもしれませんが、番地は通りを挟んで偶数、奇数に分けられていました。つまり1の隣りは3、向かいが2、という具合です。

そうしてやってきたのが、「Al Cantinone(アル・カンティノーネ)」というレストラン。人気店らしく、お店の外にまで列ができています。そのほとんどが近隣で働くひとたちのようです。店内をのぞくと、デリのようにガラスケースに料理が並べられていて、そのなかから好きなものを注文する方式のよう。ちゃんと注文できるかしらと緊張しながら並んでいると、一見して観光客とわかるからか、ウェイトレスさんが近付いてきました。

「レストランでお食事ですか」と訊かれたのでうなずくと、「それではこちらに」と奥に通されました。すると雰囲気が一変。お昼休みの喧騒とは無縁の、落ち着いた空間が現れました。どうやらカフェとレストランの入り口は別になっているようです。

注文したのは、ミラノ風リゾット、魚介とトマトのフェットチーネ、ミックスサラダ、水です。これにコペルト(席料・パン代)が入って約40ユーロ。

サラダにはドレッシングがかかっておらず、瓶ごと出されるオリーブオイルとバルサミコ酢、塩で好きなように味つけをするのでした。リゾットはなんの具かわからないまま注文したのですが、なんとカラスミでした。ちょっと芯の残る炊き具合で、とってもヴォーノ!

 

ここにコルシア書店の仲間たちがやってきて食事を楽しんでいたのですね。実はコルシア書店はここから目と鼻の先。さあ、食事をおえたら行ってみましょう。

その3につづく。(N)