花嫁の湿度
〜「春は一日結婚パーティ」ができるまで〜
 
■その5 信じる者は……
 
不忍ブックストリートで結婚式をするならここしかない、と私たちが想いを募らせていたのが、根津教会。「一箱古本市」の大家さんとしても、お馴染みの場所である。1919年に建てられた木造西洋館で、2001年には有形文化財にも登録されたのだけれど、さすがに老朽化が進み、耐震のための補強も兼ねて、大規模な改築工事に踏み切ったところだった。
 
暮れも差し迫ったある日、ふたりで改築工事が終わって間もない教会の見学に行った。中へ一歩足を踏み入れて、驚いた。歴史を感じさせる礼拝堂の趣はそのままに、なにもかもが真新しく生まれ変わっていて、見違えるようだ。案内してくれた牧師さんの話によれば、礼拝堂につながる会堂のほうは、完全に解体し、新しく造り直したのだという。どうりで光の輪が見えるほどぴかぴかなわけだ。
 
会堂には立派なキッチンも備えつけられていて、「ここで食事会なんかもできるよ」と牧師さんが言うのを、私は聞き逃さなかった。結婚式のあと、ここで食事会?まあ、なんてステキなんでしょう!
 
実は私がいちばん頭を悩ませていたのが、挙式のあとの、いわゆる披露宴のことだった。不忍ブックストリートですると決めたはいいけれど、親しいひとたちをみんな招いて食事をするのにぴったりな場所を、なかなか見つけられずにいたのだ。でも、ひょっとするとその問題をクリアできるかもしれない、という期待に、人知れず胸が高鳴った。
 
この根津教会訪問は、もうひとつ、大きな変化をもたらした。これまでほとんど結婚式の準備にかかわってこなかったIが、ようやくその気になったのだ。「ここでできるなら、いい!楽しみになってきた」と言って。こんな言葉を聞いて、喜ばない花嫁がいるだろうか。でしょでしょ楽しみでしょ、と私は天にも昇る気持ちで答えたのだった。(N)
 
 
冬の潤いはときめきから。
 
花嫁の湿度 95%